〜してみた

中世フランスのワイン宣伝員「ワインクライアー」とは?卒論を書く中で調べてみた

こんにちは、佐藤ユカ(@TOEFLJessica)です。

今、私はフランスと日本の広告をテーマにした卒論を書いています。

その関係でフランスの広告史について調べていたところ、中世フランスの不思議な職業を発見しました。

その職業とは、ワインクライアー(le crieur de vin)。

フランス風に表記すると、ワインクリユーという感じでしょうか。

これはどんな職業だったか?と言うと、まるで現代のスーパーでよく見るワインの試飲販売員のような、広報・広告・PRにも似た仕事だったんです。

調べてみるとけっこう面白かったので、ブログでも紹介してみたいと思います。

クリユー(le crieur)とは?

そもそもワインクライアー(le crieur de vin)に含まれる、クリユー(le crieur)とはどういう意味なのでしょう。

英語で言うと、「クライアー」(crier)にあたるこの言葉。

中世のフランスではどのような人々を指していたのか?まずはここから整理してみたいと思います。

「クリユー」を一言で
  • 当時の公務員で、広報業務を担当する人のこと

このクリユーとは、中世のフランスにいた公務員たちのこと。

彼らは今でいう広報のような仕事をしていたそうです。

当時のフランスにはクリユーという、呼び込み人・広報のお仕事がありました。

この仕事に就く人は、国家管理の組合に使える公務員だったそうです。

主な業務内容は王令の読み上げなど、とにかく人に情報を伝えるお仕事。

当時の国民は読み書きができない人がほとんどだったので、読んで聞かせる係は必要不可欠だったとか。

フランスのインターネットサイトを調べてみると、当時のクリユーの様子を伝えた絵が紹介されていました。

Crieurs-2.jpg

(引用:La France Pittoresque, «Crieurs publics : supports vivants
de la réclame d’antan»より

ところで、クライアーの存在を確認できる最も古い書類は、1220年のものだとか。

「フィリップ・オーガストゥスの勅令」に記されているそうで、以後19世紀ごろまで公示や情報伝達の仕事大部分を彼らが担っていたようです。

そんな彼らのお仕事は広報全般。法令の読み上げなどはもちろん、こんなお仕事までしていたとか。

  • 遺失物や失踪人のお知らせ
  • 市民や組合集会の告知
  • 競売の客集め

このように市民生活に関する事項をお知らせしていたのが、クライアーだったというわけですね。

ちなみに当時は葬式の告知を担当するクライアーもいたそうです。

それでは、そのクライアーの中でも「ワインクライアー」は一体何をしていたのでしょう?

ワインクライアー(le crieur de vin)のお仕事は?

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(引用元:Paris-Bistro.com, «Les tavernes parisiennes au Moyen Âge»より)

彼らの仕事は大きく分けて以下の3つです。

  • ワインの試飲
  • ワインの宣伝
  • ワインの測り売り

ワインの試飲

まず一つ目が、ワインの試飲。

広告の発展についてまとめた書、”The Development of Modern Advertising”によると、彼らは街を練り歩き酒屋のワインを宣伝しながら、通行人にテイスティングをすすめる仕事を担当していた、と記されています。

ワインクライアーについての記述には、このようなことが書かれています。

「12人いたクライアーのうち5人は、ワインの呼売りをしながら居酒屋を訪ね、人々が試飲できるよう、呼売りするワインのサンプルを持ち歩いていた」。

“…acording to which there were to be only twelve criers, five of which should go about the taverns crying with their usual cry, and carrying with them samples of the wine they cried, in order that the people might taste.”

(Sampson, The Development of Modern Advertising, 44).

当時のフランスにこんな仕事があったことにも驚きですが、これじゃあまるでスーパーの試飲係みたいですね。笑

ワインの宣伝

また13世紀より、クライアーによる野外でのワイン測り売りにも許可が降りたとか。

ワインクライアーはワインの値段を告げ周り、木の筒でワインを持ち運んでいたそうです。

現代でいうビアサーバーしょった売り子みたいですね。笑

こちらの絵は試飲のようすを書いているのか、販売の様子を書いているのか不明ですが、ワインの壺とコップ?のようなものが確認できます。

crieur_vin-349x400@2x-2

(引用元:Paris-Bistro.com, «Les tavernes parisiennes au Moyen Âge»より)

ワインの宣伝

さらに1258年のフィリップ・オーガストゥスの勅令では、パリのクライアーに組合作成を義務づけたそうです。

この法令では、以下のようなルールが制定されました。

 ・酒屋はクライアーの宣伝依頼を断ってはならない

 ・酒屋は組合に加入しているクライアーを雇用しなければならない

 ・クライアーは酒屋の客に「ワインの値段」を聴き、酒屋が宣伝を望もうと望むまいと、その値段を触れ回ってよい。

 ・クライアーは1日2回、触れ回りに出かけるべし。

(日曜と金曜、受難節、クリスマス期間の8日、ビジリアの際は1回のみ)

(参考:Sampson, The Development of Modern Advertising)

こうしたルールから見るに、とにかくワインの宣伝販売が彼らの仕事の大部分だったようです。

イギリスにもクライアーはいたそうですが、この「ワイン・クライアー」はフランスに固有の職業だったことも『近代広告の発展(The Development of Modern Advertising, Vol.2)』に記述されていました。

さすがフランス、ワインの国ならではの職業ですね…!

 

参考文献

・Henry, Sampson. 1874. “A History of Advertising from the Earliest Times”, In The Development of Modern Advertising edited by Morgen Witzel, 43-48. England: Thoemmes Press.

 

¥108

「広告の歴史」、1874年初出版。

古代・中世・17、18世紀の広告について記した本。

クライアーや新聞広告などについても詳しく書いてありました。

紙媒体では、2002年出版の「近代広告の発展」(The Development of Modern Advertising )二巻目に収録されています。

・高柔末秀、1994、『広告の世界史』、日経広告研究所。

KOKOKU NO SEKAISHIと書いてますが右下に小さく「This is not the actual book cover(画像は実際の表紙ではありません)」とあります。

実際に買って確認したわけではありませんが、おそらく日本語で書いてあることでしょう。

世界中の広告について、クライアーの時代からテレビCMまで網羅しています。

・F. クイラン=ルブール、1995、『パリ職業づくし』(北澤真木訳)、論創社。

葬式通報人、抜歯屋やら拷問執行人など、中世から近代にかけての職業120種類を収録した本です。

なかなかえげつない職業が多く愉快です。

・春山行雄、1981、『西洋広告文化史 上巻』、講談社。

西洋の広告について、詳しくまとめてある本。

上下巻が出ています。古代のギリシャなどから、看板、新聞広告、ポスター広告など、とにかく上下巻を読めば広告史の全貌が見えてくることでしょう。

まとめ

今回紹介したのは、フランス中世の職業「ワインクライアー」(+クライアー)についてでした。

ワインクライアーについては日本のスーパーでも見るような「ワインの試飲」「ワインの宣伝」がメインの任務だったということで、なかなか興味深かったです。

それではまた、フランスや広告関係で面白いことを発見したら、投稿してみたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

ABOUT ME
佐藤ユカ
大学4年生。北海道出身です。石狩市の高校を中退して、カナダBC州の高校に留学・そのまま卒業。 自己推薦で立教大学に入学しました。カナダ・ケベック州に興味があって、大学ではフランス語などをゆるーく学習してます。 前職ではWEBライティングのインターンをしていました。現在はアプリの英日翻訳などを行なっています。