語学

知っておくと少し楽しい!フランス語12個の慣用句とその背景

(2018年9月25日公開、2018年12月13日見出し+一部文言修正)

こんにちは。私はフランス語を勉強して4年目になる学生です。

しかし文法・会話ともに満足できるレベルには程遠く…

『うーん。フランス語の文法挫折しそう』

こう思うこともしばしばです。そんな中ちょこちょこ始めたのが、慣用句探し。

授業や本で見た慣用句の成り立ちについて調べていくと、フランスの歴史や中世フランス語との繋がりについても触れることができ、活用表を覚えるよりは楽しく勉強できることがわかりました。

当時調べたのが、以下12つの慣用句です。

※単語の意味調べにあたっては「LogoVista Corporation」の『プチ・ロワイヤル仏和(第4版)・和仏(第3版)辞典』を参考にしました。

Arriver comme un cheveu sur la soupe

日本語:全く予想していないタイミングで来る, 間の悪い時にやってくる

直訳すると、「スープに落ちる毛のようにやってくる」ですね。

「スープの上の毛」と聞くと不衛生な印象が先立ちますが、この場合は衛生面がどうこうという話ではなく、タイミングの悪さや物事が矛盾しているありさまを表現しているようです。

もともとスープはブイヨンという「だし」に近い感覚の食品だったらしく、滋養になる食べ物ではなかったそうです。

なので、「スープの上に髪が乗る」というこちらの表現も最近定着したと考えられているとか。

どのように使うのか?といいますと、主に予想しなかった出来事を表すときに使われます。

<例>

Il est arrivé comme un cheveu sur la soupe

訳:彼は間の悪い時にきた

 

類似の表現

また、これ以外にも辞書をさぐってみると「タイミングの悪さ」を使った感情を表す表現がありました。

・mal à propos(間が悪く、タイミングの悪い)

セットで覚えられるとわかりやすそうです。

 

・参考記事

  1.  linternaute, “Arriver comme un cheveu sur la soupe”, http://www.linternaute.fr/expression/langue-francaise/480/arriver-comme-un-cheveu-sur-la-soupe/ (accessed on September 20th, 2018).
  2.  Expressions françaises, “Arriver comme un cheveu sur la soupe”, http://www.expressions-francaises.fr/expressions-a/719-arriver-comme-un-cheveu-sur-la-soupe.html (accessed on September 20th, 2018).

Couper la poire en deux

日本語:妥協する、間をとる。

直訳すると、梨(la poire)を2つに切るということになりますね。

しかしなぜあえて「梨」なんでしょうかね。

 

はっきりした語源はわかりませんでしたが、Expressio.frというサイトを参照したところ、この表現は1880年代ごろに文献などで現れ始めたと言われています。

1882年には«la poire en deux»(分けられた梨)という題で、劇の1幕のタイトルとして使われたことも記録されているとか。

はじめこそ«la poire en deux»いう具合に使われていたみたいですが、何回か若干の変更があって«couper»が頭につくようになった、ということでした。

 

・参考記事

  1. Expressio fr par Reverso, “Couper la poire en deux” http://www.expressio.fr/expressions/couper-la-poire-en-deux.php (accessed on September 20th, 2018).

Être sur la même longueur d’onde

日本語:気があう、話があう、波長があうetc.

直訳の意味は「同じ波上にいる」といった具合でしょうか。

辞書を参考すると、l’ondeは物理分野の波や、水・海面などをさして使われるようです。

複数形にすると、テレビやラジオの放送に使われる電波・波紋といった意味になります。

そう考えると、「Être sur la même longueur d’onde=波長があう」というのは分かりやすい表現ですね。

 

類似の表現

また、これ以外の「気があう」を表すフランス語を探してみると…

・S’entendre avec qn (sur qch)

(〜について)<人>と折り合いがいい

こんな表現がありました。

動詞éntendreは聞こえるのほかに、理解する、わかる、聞き入れる、といったニュアンスもあるようです。

 

Faire la grasse matinée

日本語:ゆっくり朝寝坊する

直訳すると「太った朝をする」、という感じでしょうか?

«gras»というフランス語自体には、肥満の、脂肪の多い、油っぽい、といった意味があります。

この言葉はもともとラテン語で「厚みのある・濃い」といった意味をもつ«crassus»という言葉からきているとか。

そう考えると、「ゆっくり朝寝坊する」という感覚もわかりやすい気がします。

 

ところでこの表現«faire la grasse matinée»の起源は、一体どこにあるのでしょうか。

あるサイトでは、共和制ローマのキケロ(Cicéro,  106BC-43BC)まで遡って記述していました。

La France Pittoresqueによると、キケロはこんな言葉を残していたそうです。

dormire in multam diem

ラテン語で、「1日(diem)におおいに(multam)眠る(dormire)」という意味だとか。

この一文から、今のフランス語に通じる「たっぷり寝る」という概念自体はずいぶん昔からあったのかも。

 

ところでフランスで«faire la grasse matinée»と言われるようになったのは、いつのことなのでしょう。

もう一度La France Pittoresqueを参考してみると、13世紀には既に«grans matinée»と言われていたことが記されています。

さらに仏ウィキペディアによると、さきほどのキケロの言葉を思わせる«dormir la grasse matinée»という表現が16世紀から使われていたことも明らかになっていました。

«faire la grasse matinée»と言い始めたのは20世紀になってからのようですが、こうしてみると「朝の時間をたっぷりとる」を指す言葉はかなり昔から根付いていたのかもしれませんね。

・参考記事

  1. La Rédaction, 2011. «Dormir la grasse matinée», in La France Pittoresque. 

Ne pas avoir les yeux en face des trous

日本語:寝ぼけている、目の焦点が定まらない・はっきりと見える物体が見えない

二日酔いや寝つきが悪いせいで、翌朝目の焦点が定まらないとき、または目の焦点が定まらずものの見え方が悪いときに使うようです。

・関連動画

Ne plus savoir où donner de la tête

日本語:何から手をつけたらいいかわからない

そのままの意味でとると「どこに頭をやったらいいのか分からない」という感じになりますね。

この文中の«donner de la tête»は、「注意を払う」「資力をむける」といった意味もあるらしく、体の一部での頭という意味より、頭脳の意味に近いそうです。

 

類似の表現

また、これ以外にも”tête”を使った感情を表す表現を集めてみました。

・ne pas avoir de tête(忘れっぽい、そそっかしい)

・avoir la tête sur les épaules(考えがしっかりしている、思慮分別がある)

têteは頭、顔つき、表情といった「体の一部」という意味で主に使われますが、このように頭脳や人間の内面的な意味でも使われることがあるんですね!

Marcher comme sur des roulettes

日本語:(事業などが)うまくいく。

そのままの訳だと「ルレットのように(に乗ったかのように?)進行する」ですよね。

そもそもこのルレット(des roulettes)とは何か。

プチロワを参照すると、①キャスター②ゲームのルーレットなどが主な意味のようです。

フランス語では、語尾に«-ette»とつく単語は概して小さいものをさすことが多く、Roueは車などに取り付ける大きなタイヤを指すのに対し、Rouletteはキャスター等の比較的小さな車輪状のものを指すとか。

あとそういえば「うまくいっていること」「順調であること」を示すときだいたいは«Tous va bien»なんて言いますが、«Ça roule» (元気である、順調である)なんて言い方もしますよね。

・参考文献

  1. Johan Tekhak, 2016. «comme sur des roulettes», in Français Authentique,
    https://www.francaisauthentique.com/comme-sur-des-roulettes/

Poser un lapin à qn

日本語:すっぽかす

こちらは留学中、フランス語の先生に習った表現です。

「デートをすっぽかされちゃった時とかに便利な言葉ですよ」と教えてもらいました(笑)

そのまんまの意味で捉えるとうさぎを置くという意味ですよね。

すっぽかされた方はたまったもんじゃありませんが、こうして見るとカワイイ表現なのかも…?

・解説動画

youtubeにフランス語でくわしく表現の成り立ちなども説明している動画がありました。

・参考辞書(アプリ)

  1. LogoVista Corporationプチ・ロワイヤル仏和(第4版)・和仏(第3版)辞典

Prendre son courage à deux mains

日本語:勇気をおこす、がんばる

はい、訳すると「両手いっぱいに勇気を持つ」という感じでしょうかね。

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ちょっとニュアンス的に釈然としなかったので、仏ウィクショネールなどで詳しい意味をさぐってみました。

仏ウィクショネールによると、「長い間ためらってきたことを完遂するために、自分で努力すること」だとか。

Faire un effet sur soi-même pour accomplir un acte difficile devant lequel on a longtemps hésité. (仏ウィクショネール)

「ためらいや抵抗に打ち勝つために、努力すること」というニュアンスみたいですね。

 

類似の表現

また、これ以外にも「勇気を奮い起こす」表す表現を調べてみました。

・S’armer de courage …勇気を奮い起こす

※s’armer de qch …〜で武装する、という意味があるようです。

Quand les poules auront des dents

日本語:〜はけっしてない、〜は絶対に起こりえない。

直訳すると「めんどり(les poules)が歯(les dents)を持つとき」となります。

またまた変わった表現ですね。

これは全学期、大学の上級フランス語で習った表現ですが、フランス人の担当教師によると、「鳥が歯をもつっていうのは、ありえないからこういう表現がある」そうです。

カジュアルな話し言葉なので友達の前で使ってみましょう。

youtubeで発音をググってみたら、こんな解説動画もありました。

 

類似の表現

また、これ以外の”poule”を使った表現を調べてみると、日本語と同じ表現が2個もありました。

・avoir la chair de poule(鳥肌が立つ)

※la chair…肉、肉体、身、果肉など

ちなみに雌鶏はla poule、雄鶏はle coqです。

英語やフランス語って鶏の呼び名が多いですよね。

私はいっつも迷った挙句”chicken”, “bird”,とか言っちゃいます。

 

Un temps de chien

日本語:ひどい天気

直訳すると、犬のような天気ということで、日本語だと全く意味不明です。

フランス語では、«de chien»(犬の)を使うと「ひどい」「惨めな」「つらい」といった意味になります。

また、comme un chienと使っても同様です。

この言い回し自体が現れ始めたのは20世紀前半から。

当時のコンテキストでは犬は軽蔑の対象とされることが多かったそうです。

・参考文献

  1.  linternaute, “Temps de chien”, http://www.linternaute.fr/expression/langue-francaise/19466/temps-de-chien/ (accessed on September 20th, 2018).

Vendre la peau de l’ours avant de l’avoir tué

日本語:取らぬ狸の皮算用

直訳すると「クマを殺す前に(クマの)皮を売る」ですね。

意味としては、ほとんど日本語の「取らぬ狸の皮算用」のそれと同じみたい。

・まだ成果が出ていないにもかかわらず、成功したものだと早とちりする。ぬか喜びをする。

・成功してもいないのに、思い上がって喜ぶ。

・持っていないものを売る

こんなニュアンスで使われるんですね。

 

・il ne faut pas vendre la peau de l’ours avant l’avoir tué

またLawless French をみてみたところ、il ne faut pas を文頭につけると、「本来するべきではないこと」を示唆する文脈でも使えることがわかりました。

この表現は、中世にはすでに使われていたようです。(expression fr参照)

 

英語では

また、ひとつ面白いことは、英語でも似たような表現があること。

・Count chickens before they hatch

・Don’t count your chickens before they hatch.

フランス語同様、早合点する、期待しすぎる、などの意味で使われます。

 

日本語では

日本語では周知の通り「取らぬ狸の皮算用」ですよね。

日本ふうの言い回しを説明しようと思った時、フランス語で「狸」って何て言うんだろう?と思ったのでプチロワイヤルで調べてみると…

・Sorte de blaireau japonais「日本のアナグマ(le blaireau)の一種」

こんな感じになっちゃうみたいです。

どうやらフランスに「狸」はいないらしく、当てはまる単語も存在しないようでした。

今回は il ne faut pas vendre la peau de l’ours avant l’avoir tué についてでした。

日本にも、「取らぬ狸(sorte de blaireau japonais)を数える」という類似の表現があるよ、とフランスの人に告げたところ、「それは手作り感出る表現だね」と面白がっていました。

英仏日、どの言語にも似たような表現はあるけども、英語はチキンで、フランス語はクマ、日本は狸と、動物だけが違うのは興味深いですね。

 

・参考文献

  1. Lawless French, n.d. “Vendre la peau de l’ours (avant de l’avoir tué)”, https://www.lawlessfrench.com/expressions/vendre-la-peau-de-lours-avant-de-lavoir-tue/ (accessed September 20th, 2018).
  2. Reverso, n.d. “vendre la peau de l’ours (avant de l’avoir tué)“, https://dictionnaire.reverso.net/francais-definition/vendre+la+peau+de+l%27ours+(avant+de+l%27avoir+tué) (accessed September 20th, 2018).

まとめ

今回は、12つの慣用句について、意味を調べたり語源を調べたりした内容をまとめてみました。

  1. Arriver comme un cheveu sur la soupe
  2. Couper la poire en deux
  3. Être sur la même longueur d’onde
  4. Faire la grasse matinée
  5. Ne pas avoir les yeux en face des trous
  6. Ne plus savoir où donner de la tête
  7. Poser un lapin à qn
  8. Marcher comme sur les roulettes
  9. Prendre son courage à deux mains
  10. Quand les poules auront des dents
  11. Un temps de chien
  12. Vendre la peau de l’ours avant de l’avoir tué

私は3番目の«Être sur la même longueur d’onde»が、なんとなく綺麗でしっくりする表現だなと感じました。

また、4番目の«Faire la grasse matinée»のように一見意味不明な言い回しを調べてみるとラテン語にたどり着いたりと、発見が多くあったと思います。

なお、慣用句の意味・単語を調べるにあたって「LogoVista Corporation」の『プチ・ロワイヤル仏和(第4版)・和仏(第3版)辞典』を参考にしました。

スマートフォンで意味が確認でき、オフラインでも使える非常に便利な辞書なので気になる方はぜひこちらからチェックしていただければと思います。

ABOUT ME
佐藤ユカ
大学4年生。北海道出身です。石狩市の高校を中退して、カナダBC州の高校に留学・そのまま卒業。 自己推薦で立教大学に入学しました。カナダ・ケベック州に興味があって、大学ではフランス語などをゆるーく学習してます。 前職ではWEBライティングのインターンをしていました。現在はアプリの英日翻訳などを行なっています。