一言にソムリエナイフと言っても1,000円〜数万円するブランドものまで様々な種類がありますが、筆者のように非飲食店勤めで、かつ抜栓する機会が少ない人にとっては何を基準にソムリエナイフを選んだらいいか分かりませんよね。
「ソムリエナイフを買いたいが、100円ショップのものと2万円のものの違いが分からない」
本記事ではこのようなワインファンの方に向け、本業でソムリエナイフを使う人に聞いたことや、調べてみたことをもとに、覚書的にソムリエナイフの選び方・定番ブランドをまとめたいと思います。もしこの記事が、今後ソムリエナイフを選ぶ方の参考になれば幸いです。
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ソムリエナイフに関する一般的な見解
この項目では、一般的に初心者向けソムリエナイフとしておすすめされているものの特徴など、ソムリエナイフに対する一般的な見解を紹介します。
初心者向けソムリエナイフとは
一般的には「扱いやすいダブルアクションで、かつ手入れがしやすいステンレス製が初心者におすすめ」などと言われています。(※「ダブルアクション」の意味については、後ほどの項目で紹介します)
なお、安いソムリエナイフは1,000円程度、高いものは数万円ほどで販売されていますが、寿命をあまり気にしなければ価格は1,000円台のものでも充分に使用できるものも多くあります。
用途・相性による部分も
ソムリエナイフは製品によって素材、スクリューの長さ、材質といった細かい仕様が異なるため、どの製品・ブランドが合うかは用途や好みによっても左右されます。
例えば、普段から長いコルクが使われているワインを飲む人はスクリューが長いソムリエナイフを使う必要がありますし、人によっては持ち手の部分が木製のものはどうも握りづらい、という意見もあります。
このように、ソムリエナイフ選びの「正解」は用途や好みにも左右される部分があるため一概にはできません。
選ぶ際のポイント
ソムリエナイフ選びの正解は一概にできないものの、ソムリエナイフの仕様や機能のパターンを知ることで、自分の目的にあった製品を探しやすくなります。
この項目では、ソムリエナイフを選ぶ際のポイントを紹介します。
アクションの数で選ぶ
ソムリエナイフには「シングルアクション」「ダブルアクション」と呼ばれる2つのタイプがあります。両者の違いは、コルクを抜く際、ワインボトルの口にひっかけて安定させる「フック」と呼ばれる部分の数です。
シングルアクションはフックの数が1つであるのに対し、ダブルアクションはフックが2つついており、2回に分けて持ち上げられるため確実に抜栓しやすいことが特徴です。
ダブルアクションに比べるとシングルアクションは動作の数が少ないため、慣れるとスピーディな抜栓が可能になります。
スクリューで選ぶ
コルクに差し込み、引き上げる際に要の部分となるスクリューは、ソムリエナイフの最も重要な部分の一つです。
スクリューについては、
- テフロン加工(フッ素加工)がされているか否か
- スクリューの部分にミゾが彫られているか
- スクリューのとがった部分は内側に巻かれているか
といった箇所が確認すべき点として挙げられます。
よくフライパンなどに施されているテフロン加工があると、スクリューがさびにくく、かつ滑りやすくなります。また、オンラインショップなどの画像では分かりにくいのですが、スクリューの部分にミゾが彫られていると、抜栓時に空気を放出するのでよりコルクを抜きやすくなります。
また、長めのコルクを使っている高級ワインなどを抜栓する際は、スクリューも巻きが5つ程度だったり長めのものを使うことになります。
ナイフの仕様で選ぶ
ワインボトルのキャップシールを外す、ナイフ部分にも製品ごとに差があります。
ほとんどの製品は下記のシャトー・ラギオールのソムリエナイフのように真っ直ぐの形になっています。
一方、アスロなどのソムリエナイフはナイフ部分がカーブ状になっています。
カーブしている方が使いやすいという人もいれば、真っ直ぐになっている方が切りやすいという人もおり、どちらを良しとするかは好みに左右されることが多いようです。
材質・その他機能で選ぶ
ソムリエナイフの主な材料は、ステンレスとスチールです。ステンレスの方が錆びにくく、手入れも比較的簡単です。
ハンドル部分については、ステンレス・スチールの他、木が使用されていることもあります。使用される木の種類も製品によって様々で、家具などに使用される「ローズウッド」を使ったものや、ワイン醸造用の古タルを使用したものなどもあります。
どの素材が握りやすいかは個人の好みなどによる部分が強いのでなんとも言えませんが、ハンドル部分は木材を使用しているものの方が落ち着くという人は多いようです。
また、製品によっては「王冠抜き」がついているものもあります。もし王冠抜きも必要であればこちらの機能がついたものを選びましょう。
デザインで選ぶ
これまでソムリエナイフの機能や素材を判断材料として紹介してみましたが、色々な候補があって迷う場合は、デザインを決め手にして選ぶのも良いでしょう。
ソムリエナイフのデザインはブランドごとにある程度分類でき、例えばフランス南西部村・ラギオール村と縁があるブランドのソムリエナイフには、ミツバチのシンボルマークがついている場合が多いです。
Forge de LaguiolleやLaguiolle en Aubracなど複数の公式サイトが伝えるところによると、このミツバチはナポレオン時代にラギオール村の兵士たちの勇敢さが認められ、シンボルとして使用することが認められたと言われています。
(画像出典:Wine Accessories Creation|シャトーラギオールとは?)
これは「シャトー・ラギオール」のソムリエナイフの画像ですが、他にも「Laguiolle村(ラギオール村、またはライヨール村)」に関連があるブランドは「クロ・ラギオール」「フォルジュ・ドゥ・ライヨール」など複数あり、これらのソムリエナイフにミツバチのシンボルが見られることがあります(混乱しがちですが、どれも別物のブランドです)。
一方、日本のソムリエナイフ「アスロ」などはどちらかというと装飾が控えめで、配色もシンプル寄りのものが多い印象です。
とはいえ同じブランドでも、製品のシリーズによって細かい仕様が異なる場合もあるので、気に入ったブランドが見つかったら一度どのようなラインアップが出ているか確認すると良さそうです。
ソムリエナイフのブランド
この項目では、ソムリエナイフの代表的なブランドを紹介します。
プルタップス(西・プルテックス社)
スペイン・バルセロナで製造されるPulltex(プルテックス)社のソムリエナイフは、ダブルアクションで使いやすいことが特徴。同社は独特な2段式のレバーで1992年に特許を取得しています。
同社のソムリエナイフはデザインも様々で、上記のリンクにあるシンプルなデザインのものの他、ヨーロッパ各国の国旗をデザインした「Countries」シリーズや、「Slider 150 Samurai」モデルなど、ユニークなデザインのものもあります。
価格帯も1,000円台の手頃なものから1-2万円程度のプロ仕様のものまで幅広い取り揃えており、用途にぴったりの一本が見つかるでしょう。
公式サイトで製品のシリーズを確認する
SEKI(日・WINEX社)
日本製ソムリエナイフWINEXとMAXOSが共同開発したソムリエナイフ「SEKI(セキ)」は、刃物製品を特産品とする岐阜県関市で制作されています。
価格帯も4,000円程度と高すぎず、日本らしいシンプルなデザインが魅力です。
シャトー・ラギオール(仏・スキップ社)
Château Laguiole(シャトー・ラギオール)は、フランス・ティエール村で19世紀に創業した刃物メーカーです。ソムリエナイフの最も有名なブランドの一つで、プロのソムリエにも愛用者が多いです。
上記で紹介したプルタップス・SEKIと比較すると3-4万円台と価格はかなり高くなりますが、機能や耐久性のどれをとっても評判がよく、洗練されたデザインが特徴的で多くの人が憧れるブランドでもあります。
「クラシックモデル」のほかに代表的なものとして、プロ仕様の「グランクリュモデル」、世界最優秀ソムリエコンクールのチャンピオンを記念して作られる「世界最優秀ソムリエ入賞者モデル」があります。
アスロ(日・豊和刃物製作所)
ATHRO(アスロ)は、岐阜県関市にある豊和刃物製作所のブランドです。
本格的な作りであるにも関わらず1万円程度で購入できるタイプのものも多く、コストパフォーマンスの良さと品質評判を集めています。
その他のブランド
他にも、フランスには「クロ・ラギオール(仏・クロード・ドゾルム社)」や、「フォルジュ・ドゥ・ライヨール(仏フォルジュ・ドゥ・ライヨール社)」など、ソムリエナイフの有名ブランドが存在します。
あまり多くのブランドを紹介するとかえって読者を混乱させてしまうと思いますので、詳細は省略させていただきますが、詳しく調べたい方はぜひご検索ください。
左利きの場合はどうすれば
ソムリエナイフにも「レフトハンドルタイプ」と呼ばれる物があり、スクリューの巻き方が右手用のものと反対になっています。こちらのタイプを選ぶことで、利き手が左手の方も使いやすいようです。
まとめ
ソムリエナイフは大きく分けて「シングルアクション」「ダブルアクション」の2タイプに分かれ、一般的には2回に分けてコルクを引き上げられる「ダブルアクション」が無難な選択肢だと言われています。
本記事ではソムリエナイフの選び方にまつわる色々な見解・判断基準をまとめさせていただきましたが、筆者の意見としては、ソムリエナイフにせよ何にせよ、物選びで大事なのはその用途と相性ではないかと思います。
例えば普段からコルクの長いワインを飲む人や、使用回数が多い人は本格的なソムリエナイフを使ったほうが良いでしょうし、逆に筆者のようにコルクのワインを飲む機会が少ない場合は、そこまで高価なソムリエナイフではなくても事足りると思われます。
また、デザインや細かい仕様といった部分も好き好みによって合う合わないが分かれますから、どのナイフが良いとは一概にできません。
少なくともシャトー・ラギオールやアスロなど、1万円以上するものは一般のワインファンからすると大きな買い物ですから、どんなナイフがしっくりくるか見通しが立たないうちは、1,000円程度のソムリエナイフで感覚を掴んでみるのが安全ではないでしょうか。
<参考>
How Products Are Made:Corkscrew
8 Types of Corkscrews Explained: A Helpful Guide
こだわりキッチン プロの道具屋さん:シャトーラギオールについて
Forge de Laguiole:The Forge de Laguiole knives are recognizable by their bee