文部科学省の調べによると、2016年における公立大学の授業料は約54万円、私立大学の平均授業料は88万円となっています。
日本の大学に進学する場合、学費だけで200-400万円程度を用意する必要があり、
高いお金を払ってまで大学に進む意味がわからない
と感じる人も多いのではないのでしょうか。
また、日本の大学は入試に受かれば簡単に卒業できるとも言われており、大学を出たからといって必ずしも希少価値の高い人にはなれません。
とはいえ大学を卒業すると、高卒の場合に比べ6,000-7,000万円程度高い生涯賃金を得られるとされており、金銭面だけで見ると大学進学には意味があるようにも見えますが、他にはどのようなメリットが見込めるのでしょうか。
本記事では、主に大学に行く意味が見出せない方に向け、大学進学・卒業して働くことのメリットを両方紹介します。
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大学に行く意味がわからなくなるのはなぜ
大学全入時代とも言われる現在、高校卒業後は大学に進学する人が大勢いますが、人によっては大学に入る意味が見出せない場合もあります。
この項目では、大学に行く意味がわからなくなってしまう主な理由を考えてみます。
学費が高すぎるから
冒頭の情報と重複しますが、文部科学省の調べによると、2016年における公立大学の授業料は約54万円、私立大学の平均授業料は88万円となっています。
上記の調べをもとに入学金と授業料をあわせると、4年間の学費は国公立で250万円程度、私立は380万円程度となります。
私立は学校や学部にもよりますが、筆者が通っていた立教大学の例を見ると、文系の学費は入学金等をふくめ400万円以上はかかっています。
親が払うにしろ自分で払うにしろ、これは決してポンと出せる金額ではありませんよね。
余談ですがフランスの大学の学費は2万円程度(ただしEU圏内の学生にのみ適用)、ドイツは学費無料だそう。ヨーロッパの国を見るとアメリカや日本の学費の割高感は否めませんね。
誰でも卒業できるから
また、日本では入学試験にだけ合格すれば卒業は簡単。
授業の評価基準にもよりますが、大学では多少出席をサボっても、テストやレポートで点数がよければ大抵単位が降ります。
卒論についてもゼミで書き方を指導してくれるので、失敗するはずがありません。
こうした慣例がある以上、よほどのことがない限り中退・留年する学生は少なく、ほとんどの人が卒業できます。
もちろん、医学部や法学部などでは卒業〜就職にこぎつけるまで圧倒的な勉強量をこなさねばならず、かなり厳しい生活を送っている学生もいます。
しかし、私立文系については偏差値が60超えの学部でも本当に上記のような雰囲気で、言ってしまえば相当ヌルイです。
簡単に卒業できるのはありがたいのですが、これだと大学に通ったからといって自分に希少価値が付与された感じはしませんよね。
高卒(中卒)でも食っていけるから
前の項目で紹介した2019年の「ユースフル労働統計」によると、大学卒業の場合と高校卒業の場合では男性で6,000万円、女性で7,000万円ほど生涯賃金に差が出るようです。
しかし裏を返せば、高卒の場合でも下記の額の生涯賃金が得られるのです。
- 男性:約2億1千万円
- 女性:約1億5千万円
生涯賃金だけ見るとパッとイメージがつきませんが、18歳から65歳まで働くとすると、平均して男性は年に446万円、女性は319万円の給料がもらえることになります。
この額だと東京など物価が高い場所では少し厳しいかもしれませんが、地方で自分1人を養うのであれば充分やりくりできる金額ではないでしょうか。
しかも、もし実家暮らしで高額な出費などがなければお金は溜まる一方でしょう。
また、企業に雇われずとも高卒で事業を起こして成功した人も多数います。書籍「となりの億万長者」によると、アメリカの億万長者の仕事は会社経営者で、かつ学歴は高卒・大卒・大学中退のいずれかが多いようです。
さらに、年収110万ドル(約1.1億以上)の高額所得者では「学歴と資産レベルが反比例する」とまで書かれていることからも、高卒は必ずしも低所得と結びつくわけではないのかもしれません。
いずれにせよ、高校卒業であっても仕事を得て食べていくことはできるので、わざわざ大学に進学する必要がないと思う人もいるでしょう。
大学を出るメリット
前の項目での書き方だと大学に進学してもあまり良いことがないように聞こえてしまったかもしれませんが、筆者の個人的な意見としては大学を出て良かったと思います。
具体的な例を挙げるとキリがありませんが、大学進学して良かった理由を一言にすると人生の選択肢が多くなった(と感じる)ためです。
この項目では、大学に通うメリットをいくつか紹介します。
就職先の選択肢の多さ
dodaの調べによると、求人を出している企業で学歴不問としている企業は40%、大卒以上を求める企業は44%とされています。
数字だけで見るとたった4%の差ですが、業界によっては大卒以上の学歴がないと応募できない場合も多いので、将来にできる仕事の選択肢を広げるという意味では大学進学するメリットはあるのではないでしょうか。
なお、同じくdodaの調べによると、特に「総合商社」「金融/保険」「教育」「コンサルティング」といった業界では大卒以上の学歴を条件とする場合が多いようです。
一生使える知識が得られる
大学ではレポート・卒論の作成や、プレゼンテーションなどを行う際に、ワードを使って作業を行います。
こうした作業を行うだけで基本的なパソコンスキルが身に付くだけではなく、大学によっては授業の終わりに授業内容に関する意見・反論・感想などを書く機会が多々あり、限られた時間で意見をまとめる力が身に着きます。
もちろん、上記のような学習の機会は高校にもありますが、大学では圧倒的にレポート作成や意見交換の場面が多いのが特徴です。
また、大学にはそれぞれ専門分野を持った教授がおり、運がよければ自分の研究したい分野の専門家のもとで研究を進めることができます。
学歴は海外でも通用する
ちょっと大胆な見出しをつけてしまいましたが、もし海外で働きたい・移住したいとなった場合には、やはり大卒以上の学歴があると便利です。
海外で働きたい場合、就労ビザを得ることになりますが、就労ビザの取得には学歴や実務経験などさまざまな条件が設けられており、国によっては大卒以上の学歴がないとビザ取得が厳しい場合もあります。
また、国によっては日本より学歴社会とも言える場所もあり、大学卒より大学院卒の方が就職時に評価されやすい、高卒や大学卒で職務経験が浅いと本当に仕事が見つからない場合も珍しくありません。
海外に興味がない場合、あまりこのあたりは気にしなくて良いかと思われますが、将来海外で働きたい人はこうした事情も把握しておくと後々便利になりそうです。
大学に行かないメリット
ここまで大学を出るメリットをいくつか見てみましたが、大学に行かないことで得られるメリットもあるのではないでしょうか。
この項目では、大学を出てすぐ働くメリットをいくつかみてみましょう。
高卒後にお金がかからない
高校卒業後働くと、学費がかかりません。
実家暮らしだと住居と食費、光熱費もあまりかからないため、本当にお金を溜めやすくなります。
筆者は高校卒業後、正社員ではありませんが1年間アルバイトをして東京の大学に進学しました。ところが上京した直後は一人暮らしをしていたため本当にお金がかかって辛かったです。
できることなら、高校卒業後もう少し働いていても良かったと思います。
早いうちから社会経験ができる
高校卒業後すぐ働き始めると、大学に進学した同世代の人に比べ、早く社会経験を養えることになります。
自分で働くことをしないうちは、
- お金を作ることの大変さ
- 社会でうまくやっていくコツ、適度なズルの仕方
- お金のありがたさ
- 図太さ
といったものをなかなか身をもって体験しにくく、これらを身に付けないまま大人になっていく人も少なくないのですが
若いうちに社会の色々な部分をみていくことで、社会になじむスキルと、職務上のスキルを両方得られるのではないでしょうか。
社会人入試を受けられる
また、もし将来的に大学に進学したい場合、社会人入試を受けられる可能性があります。
社会人入試とは、大学や大学院が高校生に向けて実施する入試とは別に、社会人対象枠を設けて実施する入試のことです。
社会人の場合、学校に通う受験生とは準備に割ける時間が少ないため、受験科目が少なかったり、面接や小論文の提出のみを試験としている場合もあります。
社会人入試を受ければお金が溜まった時点で大学に入学できますし、試験科目が少ないため通常の試験に比べ比較的対策がしやすいことがメリットになります。
大学進学が適しているかどうかは目的による
今回は、大学に行く意味がわからなくなる理由と、大学進学するメリット・高校卒業で働くメリットについてまとめてみました。
日本では大学に入学することが割と一般的にはなっていますが、学費が高すぎる割りに、誰でも卒業できるプログラムになってしまっている大学も少なくなく、大学に入学して得られるものがさほど明確に見えないのが現状です。
こうした状況を踏まえてか、有名人の中には「大学なんて行かなくても生きていける」「大学は不要」といった「大学不要論」を主張する人もおり、大学の意味を考え直すきっかけになっています。
確かに大学に行かなくても生きていけるかもしれませんが、大学進学すると就職できる業界も広まり、海外就職もしやすくなるなど選択肢を広げることが可能になります。
どんな進路が最適かは人の目標にもよるので本記事で結論は出せませんが、大学にいく意味が見出せない場合は大学にいくメリットや高卒で働くメリットを並べ、よく検討してみると良いかもしれません。
<参考>
- 文部科学省|国公私立大学の授業料等の推移
- 文部科学省|国立大学と私立大学の授業料等の推移
- ユースフル労働統計 2019|生涯賃金など生涯に関する指標
- 厚生労働省|令和元年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」取りまとめ~高校生の求人倍率は2.52倍、求人数は前年比 4.0%増~
- リクルートワークス研究所|大卒求人倍率調査